平成28年4月、金融庁は不妊治療を対象とした保険商品の販売を解禁しました。初産の年齢が高まっており、不妊治療を希望する夫婦が増える中で、保険会社に対応商品の販売を認めることによって、治療の負担軽減につなげるのが狙いです。保険金が支払われるのであれば、安心して不妊治療を受けられますよね。しかし半年近く過ぎた今も、商品はどの保険会社からも発売されていないのが現状です。どのようなことがネックになっているのでしょうか?

高度治療になるほど、お金のかかる不妊治療

結婚した夫婦が子供を欲しいと思い避妊はせず積極的に妊活などに取り組んでいるにも関わらず、1年以上授かる事ができない状態を、不妊症といいます。

晩婚化などで出産の高齢化が進んだこともあり、今や5組に1組の夫婦が不妊と言われています。不妊治療は高度になればなるほど多額の費用がかかり、健康保険も適用されない傾向にあります。不妊治療を受ける夫婦のうち、半数以上が治療費に100万円以上かかったという統計もあります。

金額は、病院が独自に定めているので、安い病院もあれば高い病院もありますが、だいたい治療1回あたりの金額がどれくらいかかるか、見ていきましょう。

  • タイミング法:医師が検査で排卵日を予測し、指定した日に性行為を行う
  • 人工授精:洗った精子を子宮内に直接注入し、卵子と精子が出会う確率を高める

これらは、数千円〜高くても15000円程度と、不妊治療の中では比較的安価ですが、

体外受精

体内から取り出した卵子に精子をふりかけて受精させ、卵を子宮に戻す

顕微授精

体外受精の中でも、顕微鏡で見ながら、ピペットで卵子の中に精子を注入する
このような高度な治療になると、1回30万円から60万円と、非常に高価になります。ただし、年齢や回数、所得によっては自治体より助成金を受けられる場合もあります。

また、不妊かどうかを調べる検査(血液検査や精液検査)は、原則として健康保険の適用があります。

2015年11月「不妊治療保険」が解禁されました

2015年11月、少子化対策の一環として、政府が公的助成の拡大を発表したことに合わせて、金融庁が2016年2月に「不妊治療に対応した保険商品」の発売を解禁し、各生命保険会社に不妊治療保険の販売を促すという報道がされました。

国民の意見を聞き保険業法を改正し、2016年3月31日に不妊治療保険をついに解禁。

現在のところ、この解禁を受けての商品の発売はありませんが、今後発売されることになった場合、報道によると「医療保険に特約という形でつけて、加入後に不妊症と診断された場合には給付金が支払われる」というものになるそうです。

不妊治療のみの保険、というわけではないのですね。

不妊治療保険のメリット・デメリット

不妊治療を受ける人にとっては、救世主になるかもしれないこの保険。特に、どんな場合にメリットが大きいのでしょうか。また、デメリットや、入れないケースというのはあるのでしょうか。

自治体の助成が対象外であれば、大きな安心材料に

  • 43歳以上
  • 40歳未満で7回以上、40歳以上43歳未満で4回以上体外受精または顕微授精をする場合
  • 法律上の婚姻をしていない(事実婚)
  • 夫婦合算の年間所得が730万円を超える
  • 男性不妊の場合も適用される

自治体が行っている不妊治療の助成の対象にならない人にとっては、大きなメリットがあると言えます。特に、平成28年度から、43歳以上の人は完全に自費となってしまったので、心強い味方になってくれるかもしれません。

同じく平成28年度から、年齢を問わず体外受精(顕微授精)には通算の助成回数に制限が設けられたので、保険に加入していると、安心して体外受精を続けられますね。

また、この保険は女性が加入するものですが、金融庁の見解によると、男性側に問題がある場合も給付金は支払われるようです。

すでに治療を始めている人は、入ることができない

  • 現在治療中の人は、対象とならない
  • 生命保険の「特約」なので、入りたくない保険に入る必要があるかもしれない

報道されている内容では「医療保険の特約として、加入後に不妊症と診断された場合に給付金が支払われる」ようなので、すでに入っている保険に付けられる、というものではなさそうです。

また、すでに不妊治療をした経歴のある人は入れないようです。特約を付けた場合の支払が少額なら、加入の時についでに入っておこうかな、ともしかしたら思うかもしれませんが、まさか自分が将来不妊で悩むなんて、大抵の人は想像しませんよね。

また、子宮内膜症や卵巣のう腫など、婦人科系の病気にかかったことがある場合も、加入は難しいと言われています。

不妊治療保険解禁に対する、女性たちの声

SNSで、不妊治療保険の解禁に対する女性たちの声を集めてみました。「そこじゃない」という否定的な声がたくさん見受けられます。実際に不妊治療で苦しんでいる人と、政府の考えには大きなズレがあるのかもしれません。


人工授精や体外受精も健康保険の適用になれば、本当にありがたいですよね。しかし、世間の一部には不妊治療そのものに否定的な意見もあり、なかなか難しいのかもしれません

政府に対して理解を求める女性も


日本は少子化と同時に高齢化が深刻で、政府は高齢者の福祉に手厚く税金を投入して、少子化対策が後手後手になっている印象は確かにありますね。政治家にとって、少子化はどこか他人事なのかもしれないと感じるのは筆者だけでしょうか。

若いうちに子供が産める環境を


雇用が不安定だったり、多額の奨学金の返済だったりで、なかなか若いうちに結婚・出産という選択をできない若者も増えていますよね。もちろん、出産することによって、自身のキャリアがストップしてしまうことに不安を感じる女性も多くなっています。

現実は甘くなかった!2016年8月現在、保険商品は未発売

不妊保険商品の発売は解禁されたものの、半年近く過ぎた今も、商品の発売はされていません。各社が販売をためらっている理由として、次のようなことが挙げられています。

  • 商品設計が難しい
  • 不妊に関するデータの不足
  • 採算が見込めない

不妊治療と言っても、いつ妊娠できるかは分からないし、また加入者がどのような治療を何回するかも分からないので、支払う保険金が高額になることも予想されます。

また、保険料を積算するためのデータも不足しているため、各社とも、研究開発はしているものの足踏み状態のようです。保険会社は、会社として利益を出さないといけないので、割に合わない商品は販売したくないということは、仕方のないことなのかもしれません。

さまざまな問題が出ることは予想できていたのに、金融庁が見切り発車で解禁して、保険会社に「丸投げ」したことで、このような結果になっている、という意見もあるようです。

安心して、不妊治療が行える社会になることを願って

なかなか一筋縄ではいかなさそうな不妊治療保険。問題はあげだしたらキリがありません。

晩婚化で出産の年齢がますます上がり、これからも不妊で悩む人は増えると思います。不妊治療は、精神的にも金銭的にも、出口の見えないトンネルです。

政府の対策とはいえ、仮に保険商品が発売になったところで、これで少子化が劇的に改善するとか、出生率がすぐに上がるというものではなさそうです。女性たちの意見にも多かったですが、やはり健康保険の適用範囲を広げることが一番効果があるのではないでしょうか。

不妊に悩む夫婦が安心して不妊治療を受けられて、ひと組でも多くの赤ちゃんが生まれる社会になることを願っています。